なぜインドになってしまったのかよく覚えていないのですが、私と親友の美紀子は大学生活の最後の12日間を過ごす場所にインドを選びました。成田空港でシャワーを浴びてそのまま卒業式に向かったので、本当に最後の12日間でした。
その12日間の間に、インドの観光名所の一つであるヴァラナシという町に行きました。ガンジス川がある町です。
『地球の歩き方のインド編』によると、夜に火葬を行っているとのことだったので、すごく遅い時間に宿を出てその現場を見に行きました。
流石に女二人で夜のインドを出歩くのは怖かったので、ニューデリーで知り合った韓国人の男の子と一緒に行きました。偶然、彼は同時期にヴァラナシに滞在していて、数日間行動を共にしました。
火葬場では、カンカンカンと楽器が鳴らされ、人々が祈り、何かが燃えていました。それが死体かどうかは分かりません。岸辺が黄色とオレンジの炎に照らされていました。韓国人の男の子が「子供は燃やさないで川に流すんだよ」と教えてくれました。うまく表現できない独特のにおいがして、これが死体を焼くにおいなのだろうかとぼんやり考えました。
少し見学して、宿に帰りました。
夜のヴァラナシは真っ暗で、緑色のボロボロの街頭がポツポツと道を照らしていました。そんなに遠くない場所で犬が吠えていて、「狂犬病だったらどうしよう」と、美紀子と二人でビビりながら宿までの道を歩きました。
翌朝のガンジス川。昨日までのどこか神秘的で恐ろしい雰囲気とは打って変わって、生活感のある風景です。水浴びをする人、洗濯をする人、歯磨きをする人などさまざま。夜に何かが消えたのだとしたら、いまは何かが生まれる朝なんだろうなと思いました。
すごい国だなぁ…と、ぼんやりと川を眺めていたら、
「まり子!クロちゃん!クロちゃん!」と美紀子が言い出しました。安田大サーカスのクロちゃんそっくりな人がいるというのです。
数時間前に死体を焼いて灰を流し、朝になったら新しい生活が始まり、安田大サーカスのクロちゃんみたいなおじさんがマッサージを受けている。まさに「混沌」という言葉がぴったりです。これぞインド、という一日でした。