”ジュニアの純粋な情熱と喜びが、人生で何が最も大切かを教えてくれる”。ハンガリー剣士たちの旅の記録

『剣道時代』2025年3月号に、ハンガリーのジュニア剣士4人とコーチの記事が掲載されています(私は寄稿していただいた英語の記事を日本語に翻訳しました🇭🇺🇯🇵 )

昨年11月、全日本選手権を見るために来日し、滞在期間中に熊本、福岡、東京などさまざまなところで稽古もしていました。その旅を通して、どんなことを感じたのかを書いていただいています。

東京に来た際は、お友達に声をかけてミニ稽古会をしました

ハンガリーの高校生が3人、中学生が1人、ポーランド人のマリアが引率をしていました。マリアはポーランド代表選手ですが、パートナーがハンガリー人なのでハンガリー在住。ブダペストフェニックス剣道・居合道クラブでジュニアの育成をしているそうです。こういうバックグラウンドは、陸続きのヨーロッパならではだなと感じます。

実は、日本への旅はブダペストフェニックスジュニアのメンバーにとって2回目のものです。当クラブのメインコーチであるバラーニ・ティボール先生(教士七段)は、「剣道を生涯の情熱として広め、促進したい」という夢を持っています。
この夢を基に、バラーニ先生が若い剣士たちのための日本旅行を企画しました。旅の目的は、ジュニアたちに剣道を続けたくなる経験を提供することです。その経験の基盤となるのは観光と剣道の稽古です。若い世代が剣道を続けるための決定的な要素は、「成長」「成功」「友情」「楽しさ」だと私たちは考えています

『ハンガリーのジュニア剣士とコーチの旅』(剣道時代2025年3月

未成年を引率して海外に行くって、本当に並大抵のことではないと思います…。保護者の了承を得て、休みを調整し、滞在先を探してフライト・ホテルを予約するetc…。いや本当にすごいなぁと思います。

ジュニアたちと一緒に稽古するのはとても楽しいです。先生の存在は、若い世代の身体的、精神的、そして人間的な成長において非常に重要ですが、同時に子どもたちが私たち大人に与えてくれる影響も見逃せません

『ハンガリーのジュニア剣士とコーチの旅』(剣道時代2025年3月号

日本の少年剣道の先生と同じこと言ってるなぁと思いながら読んでいました。何かを与えていると同時に、与えてもらっている。

私の考えでは、ジュニアの純粋な情熱と喜びが、人生で何が最も大切かを大人に教えてくれます。子どもたちの好奇心は、大人に新しい可能性に心を開くことを教えてくれます。世代間の違いは、現代社会の仕組みやコミュニケーションスキルの発展について興味を持たせてくれます。

そして最後に、子どもたちは常に先生に挑戦しようとします。そのため、私たちは自分自身の剣道スキルを磨き続ける必要があります。私たちの剣道が強くなると、ジュニア剣道も強くなります。ジュニア剣道が強くなると、私たち自身の剣道も強くなります。これが私を動機づけ、子どもたちと稽古する楽しさを与えてくれる理由です。

『ハンガリーのジュニア剣士とコーチの旅』(剣道時代2025年3月号

読んでて「なんてひたむきで純粋なんだろう」と思いました。純度の高い気持ちや言葉は、人の心に残ります。美しい美術作品を目にしたり、音楽を聴いた後のような、暖かいじんわりとした、きらりとした感動があります。

ヨーロッパ剣道に出会ってから、何度もこの感動を感じました。人によってはそれを「心の洗濯」と呼んでいます。

みんなでうどん屋さんに行きました。防具置きっぱなしでいいの?!ってびっくりしてた

中高生たちも、旅の感想を寄稿してくれました。一部抜粋します。

剣道には素晴らしいコミュニティがありますし、身体的にも精神的にも健康を向上させてくれます。剣道を通じて多くのことを学べると思います。

ジグモンド・エルデーイ(17歳、初段)

剣道には終わりがないという感覚が好きです。常に自分を高めようと努力し、より良い自分を追求したいと思っています。周りの人々が間違いを指摘してくれ、美しい剣道を目指すよう励ましてくれるのが大きなモチベーションです。剣道は私の生活の大きな一部で、剣道のない生活は想像できません。

いつか、日本で試合に出場したいです。今は14歳ですが、多くのことが変わる可能性があります。夢は全日本選手権に外国人として初めて出場することです。

エズラ・ベキー(14歳、初段)

今回の日本の滞在は、とても楽しかったです。稽古した道場ごとに多様性があり、いろいろな体験ができました。地稽古や基本稽古に重点を置く道場もあれば、追い込み稽古や持久力を重視する道場もありました。

マキシミラン・ベレズナイ=トート(17歳、初段)

僕は、剣道は単なるスポーツではないと信じています。もちろん、試合に出るのはとても楽しいですが、精神的な側面も楽しんでいます。剣道は年を取っても新しい発見があるので、役立つし、癒されることさえあると思います。

バルナバーシュ・ホルヴァート(17歳、初段)

中高生たちの感想も、ユニークでしっかりしてて驚きました。大人の愛情や教えを、素直に、しっかりと受け止めているんだなぁって。

海外は日本に輪をかけて競技人口が少ないし、モチベーションを保つのは本当に大変だと思います。そんな中で、「自分は剣道が好きなんだ」とまっすぐでいられる人たちはとても眩しいです。オランダに移住したばかりの頃、私の同年代の人たちが「子どもの頃一緒に稽古してた友達はみんな辞めてしまった」と寂しそうに言ったのが印象的でした。これからその国の剣道の発展を担っていく立場で、子どもの頃から一緒の仲間がだんだんいなくなってしまうのは、とても寂しいことだと思います。

一方で、ある国の剣士はこんなことを言いました。「子どもの頃に日本で稽古した経験がある剣士は、剣道やめないんだよ」。カルチャーショックが大きすぎて、思い出がその人を支えてくれるんだそうです。だから、今回のこの旅は、ジュニアたちにとってすごく意味のあるものになると勝手ながら思っています。

マリアとは実は一度も会ったことがなくて、「初対面なのにめちゃくちゃ親切にしてくれた」とFacebookでわざわざお礼書いてくれました!笑 マリア、律儀でいい人です。初対面なのになぜ?って疑問に思うかもしれないけど、やっぱり、オランダで出会った友達を見て「ここまでくるのすごく大変だったろうな」と思ったことが大きいです。時を巻き戻して、その友達に寄り添うことはできないから、何か少しでも他の人の力になれたらいいなぁと思っています。

また、彼らの経験を言葉にして残しておくこともとても大切だと思っています。いわゆる「バズる記事」が打ち上げ花火だとしたら、こういう記事は長くゆっくり続く線香花火みたいなもので、いつか必ず、誰かの元に届き、影響を与える意味のある記事だと思っています。

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ABOUTこの記事をかいた人

横浜出身、オランダ在住のフリーライター&Webディレクター。ジャンルを問わないSEOライティングが得意です。ディレクションはLP・採用サイト・企業サイト・オウンドメディア、何でもやります。お仕事のご依頼は[marikoアット1design.jp]もしくはTwitterへ。[ID mariko_cabin442] 最近、剣道五段に受かりました。旅行と読書と寝ることと、漫画が好きです。細かいことを気にしない性格です。