剣道の存在意義


先日、『パリ在住ロシア剣士の願い。ウクライナ剣道代表チームへの支援と友情』を書きました。ロシア人のEvgenyさんが始めた募金キャンペーンで、ウクライナ剣道代表メンバーがヨーロッパ大会に出場できるよう、お金を集めて応援しようというクラウドファンディングです。

最初このキャンペーンを見かけた時は、正直「剣道どころじゃないんじゃない?!」と思いました。私がもし同じ状況になったら、剣道の優先順位はすごく低くなる気がします(何を考えるか想像もつかないですけど)。

でも、オランダ在住の日本人のある先生に「いつこの世界からいなくなるかわからないから、(クラウドファンディングをしようと)話し合って決めたそうです」と教えてもらって、なんかもう切なくて。

2/24にロシアが侵攻を開始してすぐ、ウクライナの剣道友達に連絡したんですけど、ロケットが空中を飛んでる動画、落ちてきた残骸の写真が送られてきました。衝撃でした。自分が知ってる友達の命が危険に晒されている。

いつこの世界からいなくなってしまうかわからないって言葉は、現実を残酷に、忠実に表現していました。

元々、剣道時代インターナショナルの収益の10%を人道支援団体に寄付しようと話してたのですが、ユニセフや赤十字ではなく、全額ウクライナチームに寄付することにしました。

きっと想像を絶する孤独を味わっているだろうし、少しでも希望とか、光とか、あたたかいものを届けたかったんです。もっと国全体に行き届くものに寄付した方がいいかもしれないけど、友達の力になりたかった。

募金キャンペーンは順調で、もうすぐ目標金額を達成します。

ウクライナ代表キャプテンのアレックスがFacebookでみんなにお礼のポストをしてたので日本語訳をしました。一部抜粋します。

もう一度竹刀を持って、剣道をしたあの日々に戻りたい。

5月に開催されるヨーロッパ剣道選手権大会。ウクライナ代表も参加します。たとえ15人全員が揃わなくても、5人でも3人でも。僕たちはここにいます。まだ諦めていません。

皆さんのおかげで、なんとか女子はチームを組めそうです。選手権では、女子チーム全員が代表となり、持てる力のすべてを発揮してくれると信じています。

この文章を読んでくださっている皆さんのおかげで、私たちはかつてないほどの応援と愛をいただいています。 私は皆さんの想いを道場の指導者に伝えるようにしており、指導者はその連鎖を辿ってウクライナの全ての剣道家に伝えています。

優しい言葉やお金、剣道具などの形で支援を送ってくださって本当にありがとうございます。ウクライナの家に荷物を置いてこなければならなかった女子選手たちのために、すでに道着や防具の手配を始めています。彼女たちはポーランドとオランダに移動し、稽古をしています。

応援して、助けてくれた、信じられないくらい優しい皆さん。会場で会ったら一人一人にハグをさせてください!

剣道はきっと、人生そのものなんかじゃないですよね。でも、僕たちの人生を理解し、付き合っていくために必要なんです。そして僕たちはいま、これまで以上に剣道を必要としているのです。

男性たちは国の外に出れないけど、女の子たちだけでも出場することで「自分たちはここにいる」って言ってることになるのかもしれません。

最後の部分が個人的には衝撃だったんですけど、彼らにとって、剣道はもうアートや心の拠り所に近いものなのかもしれないです。こんな時だからこそ、必要なものというか。

最近は、剣道人口が減ってるとか、体罰とかセクハラの問題もあるし、「剣道で食べていきたい人」と「剣道でお金儲けするなんてけしからん」みたいなところの対立があったり、なんだかモヤモヤする話題も多かったけど、私はアレックスの言葉を聞いただけで、剣道が存在してること、昔からずっと続いていることに大きな意味があるし、残ってくれてありがとうと言いたいです。

募金キャンペーン発起人のEvgenyさんのポストの日本語訳も一部引用します。

20年ほど前に剣道を始めてから「なぜ剣道をするのか?何がそんなにもあなたを惹きつけるのか?」と、幾度となく聞かれてきました。私にとって一番大切なことは、剣道を通して出会う人とのつながりです。セミナーで、日々の稽古で、大会で出会う友人たち。

クラウドファンディングを始めてから、その考えは正しかったと確信しています。

多くの人々が、他の人々を助けるために団結しているのを目の当たりにしました。想像を絶する厳しい試練に直面しているウクライナの人々が、祖国を守るために強く結束している姿も。

募金キャンペーンはとてもうまくいっています!募金活動の最初の目標額にほぼ到達しました。すでに90%を超え、150件近い寄付が集まっています そして、これは「人のつながり」がもたらしたものです!

あと数日で目標額に到達すると思いますが、募金活動は終了しません。これからも続けて、助け合います。

この募金キャンペーンはきっと「未来」を作ります。参加してくださった皆さん、本当にありがとうございました。皆さんはとても素晴らしい。私は皆さんとこうして繋がり、一緒にいられることをとても嬉しく思っています。

どうか、「いいね!」や「シェア」をお願いします。お知り合いの方にもぜひキャンペーンを紹介して、ご参加ください。どんな小さなことでも構いません。その行動が、私たちの力になります。

つながりだったら他のスポーツでもあるよ!と思うかもしれませんが、オランダの中学生の子がこんなことを言ってました。

「剣道やってる人たちって、いい人が多いよねぇ。だから、その場にいるだけでけっこういいよ」

野球とかサッカーも、礼儀や思いやりを教えているはずですが、なんか、それってすごく「日本人らしい」教育だと思うんです。日本人は、優しい。他者を尊重して、敬う気持ちを大切にしています。できてない人もいるかもしれないけど、私たちのすごく根本的なところに生きていると思います。

野球もサッカーも外から来た競技で、剣道は日本でずっと育ってきた武道(競技)です。だから日本人らしさがより凝縮されている気がします。すいませんね、参考文献とかないんですけど。

来週からオランダに行くので、ウクライナの子たちに話を聞いて、何かできることがないか私も考えたいと思います。


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ABOUTこの記事をかいた人

横浜出身、オランダ在住のフリーライター&Webディレクター。ジャンルを問わないSEOライティングが得意です。ディレクションはLP・採用サイト・企業サイト・オウンドメディア、何でもやります。お仕事のご依頼は[marikoアット1design.jp]もしくはTwitterへ。[ID mariko_cabin442] 最近、剣道五段に受かりました。旅行と読書と寝ることと、漫画が好きです。細かいことを気にしない性格です。