ヨーロッパ最大の剣道大会EKC。涙あり笑いあり。試合後のパーティはディスコでした


5月24日(金)から5月26日(日)まで、ヨーロッパ最大の剣道大会、欧州剣道大会(EKC:European Kendo Championships)が開催されました。今回、私は雑誌『剣道時代』のプレスとして参加させていただきました。
涙あり笑いあり、感動あり、パーティ、稽古ありの随分楽しい大会でした。日本の皆さんからすると海外の試合ってあんまり興味がないかもしれないのですが、各国の代表になるような選手たちは本当に真剣に日本文化や剣道を学んでいて、性格もいいしユーモアある人も多くて、すごく楽しい場です。海外剣道の面白さが少しでも伝わればと、自分なりにレポートを書いてみたいと思います。

開催地はセルビア

今回の開催地はセルビアのベオグラード。セルビアに関して私が事前に知ってたことはサラエボ事件です。中高生の時に歴史で習いますよね。第一次世界大戦のきっかけとなったサラエボ事件はセルビア系の青年がオーストリア皇太子を暗殺したからである…。それ以外はセルビアについて全然知らなかったのでこの欧州剣道大会がなかったらセルビアに来ることはなかったと思います…!

セルビアは親日国。肉とパンが安くて美味しい。街も綺麗

剣道と全く関係ないんですが、セルビアの観光情報を紹介してもいいですか?
と言っても私はほぼ観光はしなくて、最終日の朝に1時間かけてベオグラードの街をランニングしてまわったくらいなんですけど。それでも、街並みはけっこう趣があって綺麗でした。

オープンカフェ。ヨーロッパっぽくて可愛い

ベオグラード要塞。大砲やミサイルを初めて見たのでドキドキしました。

宿泊したホテルの前にある昔の駅。今は使われていないそうです。

路面電車はちょっと古いけど色やデザインがとても可愛らしかったです。街の中心地にはベオグラード要塞やニコラ・テスラ博物館など観光名所がいろいろあります。ニコラ・テスラはエジソンと電流戦争をした人ですね。エジソンを超える天才とも言われてるそうです。セルビア人だったんだ〜。

食べ物は肉が本当に多くて、様々な肉を食しました。米の代わりに肉食べる、みたいな。
セルビア人は体格のいい人が多いのですが、肉たくさん食べてるからかもしれませんね。チーズもいろいろ種類がありました。
オランダ周辺の国は物価高いのですが、セルビアは物価安かったです。日本だとお酒も飲んで1人8000-1万円くらいの料理が1人1500円とかで済みます。

余談ですが、オランダ人てすごく背が高くて平均身長が男性は186cm、女性は168cmくらいあるんですね。
私は身長168cmで日本にいると「デカイ女」に分類されるのですが、オランダだと平均身長。オランダで生活するようになって生まれて初めて、「マリコはスモールピーポーだから」と言われ衝撃を受けました。
でも本当に、オランダにいると自分がちっちゃい人間のように感じるんです。

そんなオランダ人たちが、この欧州剣道大会では「ふつう」くらいのサイズに感じました。
オランダで一番デカイ選手は2m4cmなのですが、その人ですら「ちょっと大きいかな?」くらいの印象に。ヨーロッパの人のフィジカルの強さを見ていて実感しました。

パンも美味しい!そしてでかい。菓子パン系もがっつり系もいろいろあります。100円くらいでけっこうボリューミーなパンを食べられます。
ちなみにセルビアは親日国らしいのですが、全日程通して中国人に間違えられることが多く親日ぶりはあまり感じる機会がありませんでした。

スポーツに力を入れてる

こんな感じのセルビアなのですが、スポーツに力を入れているようです。剣道の選手も、大きな大会で入賞したりすると補助金が出るそうです。選手は一ヶ月働かなくてもいいくらいのお金がもらえるらしい。剣道ってアジアのマイナー競技なので、その剣道にもそんなにお金が出るなんてすごいなーと思いました。韓国の選手たちも子供の頃からエリート教育を受けていると聞きましたが、セルビアも似たような制度があるんですね。

剣道の歴史も長くて、紛争を経験しながらもずっと普及を続けてきたそうです。現在のセルビア剣道連盟の会長さんはご自身で道場も経営していらっしゃって、さらに飲食店を複数経営しているそう。本当に、剣道やってる人っていろんな人がいるなぁ。「子供は未来だから」とジュニアの育成にも力を入れているそうです。明るくてエネルギッシュで、なんか話してるとこっちも元気になるような方でした。
どこの国でも、こういう風にアツイ想いを持ってる人が、周りを引っ張っていくんだろうなぁなんて思いました。

タイムテーブル

試合会場になったアリーナ。めっちゃ大きかった。

試合会期中の簡単なタイムテーブルをご紹介しますね。

  • 5月24日(金)ジュニア団体、女子団体、稽古会
  • 5月25日(土)ジュニア個人、男子団体、稽古会
  • 5月26日(日)女子個人、男子個人、段審査、さよならパーティー

この試合の特徴の一つにジュニアの部門があることが挙げられます。世界大会もそのうちジュニア部門できないかな〜。
みんな一生懸命試合してて見てるだけで目頭が熱くなってきます。
隣国のフランスの子達も出てたのですが、残念ながら負けてしまい、最後に彼ら泣いてて、つられて一緒に泣きそうになりました。

男子も女子もジュニアも、フランスがとにかく強くてメダル獲得数も圧倒的に多いそうです。
Wikipediaに「メダルテーブル」というのがあって、これまでの各国のメダル獲得数が記載されています。これ誰が作ったんだろ。メダルテーブルすごい。

優勝したら国歌が流れる!

欧州剣道大会では、個人も団体も、優勝した国の国歌が流れます。
「毎年フランスが優勝するから、フランスの国歌が流れる…」とオランダ人の友達に教えてもらったのですが、今回、女子の団体はオランダが優勝。オランダの国歌が流れました。でもみんな歌い慣れてなくて、スマホで国歌調べて、スマホ見ながら歌ってました。
フランスは男子が個人・団体優勝したのですが、歌い慣れてた…。

今回の欧州剣道大会は、アフリカも含め42か国が参加したのですが、閉会式ではいろんな国の国歌が流れ、開会式ではセルビアの伝統的なダンスが披露されたりして、すごく興味深かったです。参加国が多いと、きっと大変なことも多いと思うのですが、多様性があっていいなぁと感じます。

1日目と2日目の終わりには稽古会

世界大会の時もありましたが、1日目と2日目の終わりには稽古会がありました。先生方が元に立ってくださって地稽古をお願いします。
私は愛知の東先生に稽古をつけていただきました。剣道時代Internationalで東先生の記事を翻訳して掲載していて、いつかお会いできたらいいなぁと思っていたので感激しました。

3日目には段審査とさよならパーティー

最終日には段審査がありました。大規模なセミナーや大会があると、その最終日に段審査が一緒に開催されることがあります。
また、世界大会やこちらのセミナーの最後には”さよならパーティー”が開催されます。
SAYONARA PARTYってそのまま訳されます。このパーティ、本当に華やかでいつも写真だけ見てて「いいなぁ、楽しそうだなぁ、私も行ってみたいなぁ」と思ってたので参加できて嬉しかったです。
9月の世界大会の時には、ニュージーランドの選手がハカ(ダンス)を披露してくれたらしく、「酔っ払って動画撮れなかった。誰かニュージーランドの彼のダンス動画に撮ってない?」って仲間内で話されてて、「剣道の試合で、なぜハカを踊ったんだろう…」と、その話を聞いただけでパーティーに参加したい気持ちが高まりました。

男の子たちはスーツ、女の子たちはドレスで、みんなドレスアップしてて、すっごく可愛いんです。オランダの子達はブラックのドレスに国のオレンジカラーのワンポイントアクセをつけてます。フランスの子達はミニスカートとシャツにドット柄のレッドスカーフつけててフランスっぽくて小洒落ててめっちゃ可愛かったです。ルーマニアの女性たちは「コンパニオンさんたち来たの?☺️」と最初勘違いしました。剣道やってる人に見えなかった。

パーティはレストランを貸し切って開催されました。ガーデンで外の風にあたりながらゆっくりできる場所と、屋内でダンスできる場所に分かれてて、踊って外で休んで、また踊って休んでを繰り返していました。楽しかった😭

試合結果と動画

ジュニア団体
優勝 : セルビア
準優勝 : ロシア
3位 : フランス、チェコ

女子団体
優勝 : オランダ
準優勝 : フランス
3位 : ポーランド、スイス

ジュニア個人戦
優勝 : L. Klyuev (ロシア)
準優勝 : J.K. Wright (イギリス)
3位 : R. Kusurgashev (ロシア)、M. Cornea (ルーマニア)

男子団体
優勝 : フランス
準優勝 : セルビア
3位 : ポーランド、スペイン

女子個人戦
優勝 : L. Meinberg (ドイツ)
準優勝 : M. Ponomareva (ロシア)
3位 : F. Smout (オランダ), A. Akila (ギリシャ)

男子個人戦
優勝 : Nakabayashi (フランス)
準優勝 : Babos (ハンガリー)
3位 : Bertout (フランス), Kaczor (ポーランド)

こんな感じの大会です。欧州剣道大会は、世界大会が開催される年以外に開催されます。なので、来年も開催予定。次はノルウェーです!
みんなこの大会を目指して日々稽古してます。オランダの人たちも、仕事しながら週3-4、時間をやりくりして稽古しているので本当にすごいなぁと思います。
優勝した人、負けてしまった人、みんな色んな想いを抱えて稽古してきたんだなーと試合を見てて思いました。大人になってからも、こんなに一生懸命になれることがあるなんて最高だなって。

剣道が盛んな国は日本から定期的に一定期間、高段者の先生がいらっしゃって稽古をつけてくださっているそうです。ハンガリーなんかは、ずっと日本人の先生が住んでいらっしゃって、みなさん剣道も綺麗で日本語も上手くてすごいです…。国士舘大学に留学している方が多いとか。年齢層は20-40代までと幅広いのですが、やっぱりヨーロッパの人たちはフィジカルが強いなぁと感じます。

ヨーロッパでは、選手としての期間が終わったら剣道辞めてしまう人もいるらしく、生涯剣道の考え方がもっと広まればいいなぁと思います。私、ヨーロッパに来てできた剣道の友達みんな好きなので、ずっと友達でいたいと思ってます。剣道続けてたら歳を重ねても繋がりを保てるし、年齢によって感じる剣道の面白さって変化すると思うので…。

剣道を続けている理由

選手の中には、子供からずっと続けている人や、日本の大学に留学して体育会で稽古してきた人、あまり盛んではない国で一生懸命剣道している人など本当に様々です。剣道を続けている理由は、運動競技としての魅力だけではなく、その精神性に惹かれている人も多いみたい。

エストニアの女性選手は「自分に打ち克つ気持ちを持ちたくて剣道してます」と言ってました。また、剣士の多くがお互いをリスペクトする気持ちを持っているからコミュニティが心地良いと考える人もいるようです。交剣知愛ですね。チームとしてみんなで何かを達成するというスポーツ的な面白さだけではなく、色々な楽しみがあるのが剣道の醍醐味だなと選手の人たちを見ていて感じました。


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ABOUTこの記事をかいた人

横浜出身、オランダ在住のフリーライター&Webディレクター。ジャンルを問わないSEOライティングが得意です。ディレクションはLP・採用サイト・企業サイト・オウンドメディア、何でもやります。お仕事のご依頼は[marikoアット1design.jp]もしくはTwitterへ。[ID mariko_cabin442] 最近、剣道五段に受かりました。旅行と読書と寝ることと、漫画が好きです。細かいことを気にしない性格です。