剣道を英語で説明するには


オランダに住んでいると、「剣道って何?」と説明を求められる機会が多いです。新しく知り合った人に自己紹介する時や、防具を持って公共交通機関に乗っている時など。最近はオランダ現地で剣道ワークショップを依頼される機会もちらほら。

日本では学校の体育の授業で剣道を習うこともあるし、部活動としても定着しています。しかし、海外だと知らない人もまだまだいます。正確に剣道を認識してもらうためにはどうすればいいのでしょう。そこで今回は、「剣道の英語での説明」について考察します。

英語での簡単な説明

初めて剣道に触れる外国人に対しては、以下のような説明をするのはどうでしょう。

日本語
剣道は日本の伝統的な武道です。防具をまとい、面・小手・胴・突きを竹刀で打ちます。最大の特徴は、剣道を通して武士の思想を学び、人間形成に役立てることを目的としている点です。単なるスポーツではありません。剣道を通して身体を鍛えるだけではなく、精神も鍛えます。他人への振る舞いや、自己規律、勤勉さ、集中力などを鍛えられる点が評価され、近年は海外でも広がりを見せています。

英語
Kendo is a traditional Japanese martial art. We put on armor and aim to strike four parts with a bamboo sword: The head, wrist, torso and throat. The most distinctive feature is that the purpose of Kendo is learning the Samurai philosophy through Kendo training and use it for self-discipline. It’s not just sports. We train not only the body but also the spirit. Kendo has been recognized for the behavior towards others, self-discipline, diligence and concentration and in recent years has been spreading all over the world.

説明する際のポイントは、以下でしょうか。

  • 日本の伝統文化(武道)だと伝えること
  • 競技性を伝えること(防具を身にまとって竹刀で面・小手・胴・突きを打つ)
  • 単なるスポーツではないこと
  • 精神性が重視されていること
  • 思想の起源は武士道にあること

あとは、必要に応じて礼法や生涯剣道の説明を加えるなど。他に「これも説明したほうがいい!」というのがあったら、コメントしてもらえると嬉しいです。

剣道とは何か

剣道の英訳を考える際に、そもそも剣道とは何なのか、その定義について考えてみることも重要だと思います。ネット・書籍等で調べると色々解説は出てきますが、全剣連の見解が一番わかりすかったので、興味のある方はぜひ読んでみてください。

全剣連によると、「剣道とは武士の生活の中から生まれた日本独特の文化」です。武士が剣の理法を自得するために歩む「道」をいいます。

剣道の起源は日本か韓国か?という話題がたまにヒートアップしてますが『全剣連の見解』は非常にわかりやすくて納得感があります。

剣道を通じて武士の精神を学ぶこと

剣道を学ぶ上では、剣の理法とその奥にある武士の精神を学ぶことが重要です。剣道の厳しい稽古はその手段の一つで、稽古を通して武士の生活態度や武士の精神(心構え)も学ぶのです。

武士の思想とは何か

武士の思想が確立されたのは江戸時代。柳生宗矩の「兵法家伝書」、沢庵宗彭の「不動智神妙録」、宮本武蔵の「五輪の書」などは、そうした思想を集大成した兵法書です。これらの書籍は、現代でも多くの剣道家に示唆を与える名著と言われています。

そして彼らが書物を通して武士に問いかけたことは、「いかにして死を超越して生に至るか」という問題です。なんだか現代人も考えちゃうテーマですね。「死」までは考えがなかなか至らないけど、「いかに生きるか」とか。

この思想は、武士の日常生活の教育にも根付いていました。彼らの日常生活は厳格で質素。才能を磨き、武術に励み、善悪を知り、大事があれば藩や国のために命を捧げてきました。

今もトップ選手は「剣道を通して私生活を正す」と言ってますが、武士道の精神はいまなお、日本人の心として現代に生きてるんですね。

竹刀は刀、稽古着・袴は正装

上記の思想は、道具や稽古着にも表れます。竹刀は武士の刀です。稽古着・袴は武士の正装であり、単なる運動着ではありません。

特に、刀の起源は平安時代にまで遡り、武士の魂と言われてきました。オランダでテニスの試合を観た時に、選手がイラついてラケットを地面に叩きつけ壊していたのですが、そういった光景は剣道ではありえません。また、稽古着・袴は正装であるため、着装の美しさが重視されます。

この精神を学ばずに剣道をすることは、単なる肉体的運動をしていることになってしまい、真に文化性を理解しているとは言い難いです。なので、説明するのは大変なのですが、海外で剣道するときはこの点も伝えていかないといけないんだろうなと強く感じます。

剣道の英語名称と動詞

昔、学校の授業で「剣道」を英語で説明する際の単語について教わって、その時はJapanese fenshingと習いました。でも、日本に少し興味のある人はKendoを知っているので「I do Kendo」と言うと通じます。playでもいいみたいですが、スポーツ感が出ちゃうので私は使ってません。

日本のことを知らなくて「ケンドー?何それ?」って反応の人には「Kendo is one of the traditional martial arts in Japan, like fenshing. We use bamboo sword.(剣道は日本の伝統的な武道の一つで、フェンシングみたいなものだよ。竹でできた剣を使うんだ。)」と話しています。「竹の剣〜?!」みたいに不審がられることもあれば、「oh, great! (へえ、すごいね!)」といい感じに反応してもらえることもあります(お世辞??)。

ちなみに動詞は、「剣道やってるんだ」と言うときはdoを使ってます。剣道やってない人に「今日剣道の練習あるんだ」と話す時は「I train (practice) Kendo today」と言います。仲間内では「今日稽古あるよ」は「I do keiko today」と「keiko」を使ってます。

martial artsか、martial wayか?

武道のことをmartial artsと言います。martialの意味は「戦争の、勇ましい、好戦的な」。artと言われて思い浮かぶのは、「アート、芸術」ですけど、artにはいろんな意味があります。「芸術(活動)、美術、美学、芸術論、美[芸術]的価値、 〔大学の〕一般教育、 〔ある分野の〕技術、技巧、技、術」。martial artはどの意味で使われているのでしょう。

オランダ人の友人は、着装や姿勢を子供達に指導する際、「武道はmartial artsと訳される、つまり美しくないといけない」と説明して子供達も納得してたので、やはり「芸術、美」的な意味でしょうか。戦争と美って相反しますね。

martial artの日本語訳をweb辞書アルクで調べたら「武道、武術。柔道や空手など、戦闘術や護身術を起源とするスポーツ」とありました。どうやら日本の武道に限られるわけではないようです。アムステルダムで2020年にYOKOSO DUTCH OPENというマーシャルアーツのイベントがあるのですが、日本的な要素はあまり感じません。

全剣連のEnglishページでは、martial arts ではなく martial wayと訳されてて興味深かったです。この訳し方、初めて見ました。剣道を長くやってるヨーロッパの人たちや保護者の人たちに「剣道はwayでしょう?人に対する振る舞いや、自己規律を学ぶんですよね」と言われたことがあるので、人間形成を強調したい時はmartial wayと訳すのもいいなと思いました。

剣道を説明するのに適切な動画は何か?

言葉で説明するのが面倒な時は、写真や動画を見せてもいいかもしれません。以前、楽天に勤めていた時に外国籍の新卒たちに部活動紹介をする機会があってプレゼンをしたのですが、当時の部長(カナダ人。剣道大好き)が、「ぜひこの動画を流して!!!!」と送ってきたのが高鍋選手の動画でした。残業続きで忙しくて、当日まで中身の確認ができなくて。楽天剣道部とは一切関わりがない高鍋選手の試合動画を流しました。完全に部長の趣味です。

しかし、動画を流したらものすごく盛り上がりました。剣道初心者かつ人種・国籍が様々でも、高鍋選手の凄さって伝わるんだ、プロってすごいと感動したことをよく覚えています。ただ、このままだと楽天剣道部に高鍋選手がいると勘違いされかねないので「この選手と本クラブは一切関係がありません」と補足しなければなりませんでした。「なんでこの動画流した…」的な空気が流れましたが盛り上がったのでよかったです。

このように、外国籍の方に剣道を説明する際は、有名選手の試合動画や一本集を見せたり、剣道形の動画を見せてもいいと思います。

まとめ

以上、長くなりましたが「剣道を英語で説明するには」のまとめでした。日本人同士だとふわっとした表現でも伝わることも、外国籍の方には根本の思想から説明しなければいけないこともあります。英語で説明するには、中身のある内容を日本語でも説明できないといけません。説明するのは大変ですが、勉強になります。本記事が、海外で剣道をする方々の参考になれば幸いです。


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横浜出身、オランダ在住のフリーライター&Webディレクター。ジャンルを問わないSEOライティングが得意です。ディレクションはLP・採用サイト・企業サイト・オウンドメディア、何でもやります。お仕事のご依頼は[marikoアット1design.jp]もしくはTwitterへ。[ID mariko_cabin442] 最近、剣道五段に受かりました。旅行と読書と寝ることと、漫画が好きです。細かいことを気にしない性格です。