先日、European Kendo Championships(欧州剣道大会)を観てきました。この大会は、ヨーロッパ剣道界の一大イベントです。
ヨーロッパの剣道人口のうち、有段者は約1万人。今回の大会参加国は42カ国にものぼりました。
私が現在住んでいるオランダは、女子が団体戦で優勝。試合が終わった後にキャプテンの女性に話を聞いたのですが、プレッシャーと上手く付き合えたのが勝因と感じました。今回の記事では、オランダ人の団体行動に関する考え方や、プレッシャーとの付き合い方についてまとめます。
タイトルには「オランダ式」とありますが、広いオランダの中でも剣道コミュニティの中での話なので、小話程度に読み進めてもらえたら嬉しいです。
団体行動に対する考え方
オランダのみんなと一緒に参加した国際試合の時に気付いたのですが、オランダ人はかっちり集合時間を決めません。
「試合開始がxx時で、竹刀チェックがxx時だから、だいたいxx時に集まろう」と各自が判断して試合会場に来ます。
めちゃくちゃ大事な公式戦の時は違うかもしれないのですが、割とふんわりしています。
集合時間がはっきり決まってないので、早く来る人もいれば遅く来る人もいます。xxがまだ来ない!とキャプテンがそわそわして、ようやくみんな揃ってアップ開始。
その様子を見ていると、「集合時間を決めて集まった方が効率いいのに」と感じてしまいます。日本人はきっちり時間を決めて団体行動をとりますが、素早く行動できて、集中しやすく、実はすごく理にかなっていると感じました。
この話をオランダ在住歴が長い方に何気なくしたところ、「そもそも、集合するっていう発想がないのかもね」と言われました。子供の頃から集団行動をする日本人と違い、オランダ人の中には学校の時間割も自分で決めて自分のペースで勉強してきた子もいます。団体行動はほとんど取らないそうです。確かに、子供の頃から団体行動を取ることが少なかったのであれば、「集合時間を決めよう」という発想も起こらないでしょう。
アップの様子を見ていると、そもそもみんなとアップしないで離れて素振りをしている人も…。オランダ人は個人主義と言われることがありますが、どうやってチームを作るんだろう、と不思議でした。
気持ちをさらけ出す
試合の前夜、オランダの女子チームのメンバーは全員が円になって、話す時間を設けたそうです。キャプテンの女性が声かけをして、各自が抱える不安な気持ちや疑念を全て吐き出したそう。もし不安な気持ちを抱えて寝れなかったら、次の日のパフォーマンスに影響するからだそうです。
自分の不安な気持ちを言葉に出せれば、女性は特に気持ちがスッキリするでしょう。また、それをメンバーが受け止めて、支えてくれるなら、こんなに心強いことはありません。
実際、次の日の試合も、誰かが負けても誰かがカバーし、とてもチームとして上手く機能していたと感じました。
強みを見つけて伸ばす
もう一つ、長期的なチームビルディングで意識したことは「各自の強みを見つけて、それを伸ばすこと」だそうです。これはとてもオランダらしいなと思いました。さらに、その強みを見つけることで各自が自信を持つことも大切にしたそう。
試合の直前も、「私たちは勝てる」とキャプテンは勇気を出して口にしたそうです。「勝てる」って言葉に出すのは、リーダーとしてとても勇気がいることだと思います。「言っても言わなくても結果は同じだろうから、それなら言う!」と思って言ったそうなのですが、それもオランダ人らしいなと感じました。
気持ちをさらけ出すという行為も、強みを見つけて自信をつけることも、プレッシャーと付き合う上で大きな効果を発揮していたように感じます。前者は、チーム内での信頼を深めることにも役立ちますし、自分の強みを意識することは、プレッシャーと戦う上で大きな支えになるでしょう。
でも、一番は人間関係が良かったことかなとも感じます。誰かが自分の考えを押し付けることなく、各自が良い距離で付き合い、仲のいい人たちだなぁとそばで見ていて思いました。キャプテンの女性は、困っている人がいるとすぐに声をかける優しい人です。今回の優勝に関しても「勝てたのは今までの積み重ね。これまでチームに関わった全ての女性とコーチの功績」と話していました。
チームやコミュニティを大切に想っている人がいると、場の空気はとても温かいものになります。良いチームを作るにあたって、オランダらしい側面もたくさんありましたが、根本にある一番大切なことに国は関係ないのかもしれません。