『剣道時代』の巻頭に「私の好きな言葉」という連載があって、2023年6月号で「交剣知愛」が取り上げられていました。
恥ずかしながらきちんと意味を調べたことがなくて、「一緒に稽古や試合をすることで交流して、友達の輪を広めることかな」くらいにしか考えていませんでした。
記事を寄稿されていたのは、高知県にて風の庵道場を運営されている横山紀夫先生。ドイツやイタリアでの指導のご経歴もあるようです。
「交剣知愛」は、玉利嘉章先生(範士九段)が常々話されていた言葉です。玉利先生は私の母校の大先輩、在学当時の総監督で、「交剣知愛」についてこう話されていました。
「愛は[おしむ]とも読む。去り難い、後ろ髪を引かれる思い。『剣を交えて、愛しむを知る』、稽古をお願いした後、このままお別れしたくない、また稽古をお願いしたいという気持ちにかられる。相手にそう思われるような剣道でないと」
剣道時代2023年6月号『私の好きな言葉』
英訳するとどうなるのかなぁと、Kendo Jidai Internationalの翻訳者と一緒に考えてみました。
まず、日本語の「愛」に「おしむ」の意味合いが含まれることを説明しないといけないですね。
“Kouken Chiai” is one of the most common words in kendo. In Japanese, the word “love” includes the meaning of “regret”. This is the feeling of being reluctant to leave. After doing Keiko with someone, one does not want to part with them and do Keiko with that person again.
(「交剣知愛」は剣道でよく使われる言葉の一つ。日本語の「愛」には「おしむ」といった意味が含まれ、これは去り難いという感情を意味します。稽古が終わった後に、このままお別れしたくない、また稽古したいと思わせるような人のこと)
日本人の「愛」の概念て、どこかはかなくて、さみしさ、切なさ、その中に美しさもあるのかなぁなんて。ある国のある言葉に完全に対応する言葉って、存在しないこともあって、日本人が感じてきた「愛」も実は他の国の「愛」とは少し感覚が違うのかもしれません。
全日本剣道連盟の『剣道和英辞典』にも訳が書いてあったので引用します。ちなみにこの辞書めちゃくちゃおすすめです。
交剣知愛
剣道を通して互いに理解しあい人間的な向上をはかることを教えたことば。稽古や試合で剣を交えた相手と、もう一度稽古や試合をしてみたいという気持ちになること。また、そうした気持ちになれるように稽古や試合をしなさいという教えをといた言葉。koken-chiai
全日本剣道連盟『剣道和英辞典』
A term referring to the desire to achieve mutual understanding and betterment of humanity through kendo. Also, the desire to practice or have a match with an opponent one has practiced or competed with before. This term is also used as a teaching to encourage practitioners to engage in keiko and matches in such as way as to engender such desires.