スポーツハラスメント(スポハラ)とどう向き合っていくべきなのか

自分が学生の頃はそんなに気にしたことはなかったのですが、社会人になって町道場に所属するようになると、小学生の保護者の悩みというか、モヤモヤを聞くことが増えました。

思い返してみると、低学年の保護者の方が多かったのですが、稽古で先生に吹っ飛ばされたり、頭を太鼓のバチで叩かれたり、あとは不用意に傷つけるような言葉を言われたりして、モヤモヤしている感じでした。

剣道未経験者のご家庭がほとんどで、

  • ボランティアで教えていただいているから、疑問を呈しにくい
  • オブラートに包んで話しても「これが剣道だから」と言われる

など、「話しても無駄」みたいな空気がありました。その結果、不満は言わずにやめていく。

「ちょっとやりすぎなのでは…」と、道場内の人に話したこともあるのですが「文句があるならやめればいいんだよ」と言われたり、「受験が原因で高学年で辞めるのではなく、先生が嫌でやめているのでは…」と話したらめちゃくちゃ怒られて、縁を切られたこともあります(当たり前かw)。

それなりに厳しい学校で稽古してた先輩は「うちの顧問、試合で負けるとパイプ椅子で殴ってきたよー」と言ってて、知り合いの先生は「練習試合で、俺が試合してる時にうちの顧問が審判してたんだけど、いきなり『やめ』かけて、試合がダメすぎるって俺その場で殴られた」とも言ってました。文字にはとてもできない、「よく死ななかったね」とびっくりしたエピソードもありました。乗り越えてきた人たちは笑い話にしているのですが、傷ついてやめていった人もたくさんいるんだろうな。

本当によく聞く話なので、なんというか、全体の空気感にも大きな影響を与えているのではないでしょうか。剣道経験者ではない現代人がこの価値観の中に放り込まれるのは、無理があります…。

一方で、社会の変化の影響なのか、意味不明な要求を学校にする大人、人の言うことを全く聞かない、uncontrollableな子どもが増えたという話もよく聞きます。増えたというか、顕在化しただけなんじゃないかなーと個人的には思っています。私より上の世代でも言葉が通じない、会話ができない人はたくさんいると思うので…。

そういう人たちと接するのに、相手に合わせずに押し切りたくなる場面もきっとあるのかもしれません。パワーバランスを作って、押し付けないと、どうにもこうにもできないのかもしれません。

もしかしたらもっと短絡的で「自分の時代はこうだったから」と、受けてきた指導をそのまま当てはめているのかもしれません。でも時代は変わります。いまは普通に傷害事件になるし、人権侵害です。もっというと、「昔はOKだったから今もOK」ではないです。昔も今も、ダメ。

ここ10年くらい、ずっと考えてきたのですが、スポハラを受ける側・する側どちらにも言い分はあって、誰も「子どもを痛めつけてやろう」「支配してやろう」と、強い意識をもっているわけではないと思います。潜在的な意識はわからないけど。

「本当に、世間にはどうしようもない問題児がいる。そういう子たちは、体罰したり、人権侵害をするような言葉を言わないと変わらない」と言われたこともあるのですが、これは、文字に起こすと「いやいや、それはダメだよ」とすぐ言いたくなる人もいると思うんですけど、なんか問題はもっと根深いんじゃないかなと思うんです。家庭で躾できてない子をポンと預けられて、これ以上一体どうしろと?という悲痛な叫びに、私には聞こえました。

自由というものをはきちがえて、「ならぬものはならぬ」と突き通せない社会になってきているからなのかな?そのしわ寄せが、いろんなところに来ているのではないでしょうか。

自由とは、一体なんなんだろうと最近考えます。

「自由の女神」はStatue of Libertyと英語で書きます。Freedomじゃないんですよね。Libertyには「勝ち取った権利」という意味合いがあるそうです。かつて権利を持っていなかった人たちが、自分の権利のために戦った国だからこそ、生まれた言葉なんだろうなと思います。

東洋的な「自由」の意味は「自らを由縁とする」ことだそうです。仏教学者の鈴木大拙先生が「本当の自由とは?」という問いに対して「肘外に曲がらず」と答えたそう。肘は外側には曲がらない。あるものがその本来のあり方を十分に発揮している姿が、東洋的な「自由」だそうです。

秩序なく何でもかんでも好き勝手、自分勝手に人に迷惑かけることを「自由」とは言わないし、人に共感して、情けを持って、お互い様の精神で生きていくことを教えてくれるのが、先生なんじゃないかなぁと思ってます。剣道が強かろうが・弱かろうが、剣道をやっていようが・やっていまいが、何してようが、結局、そういう人間になることが大切で…。

なんか誰も彼もが自分勝手で、そこを見落としているんじゃないかなぁとたまに思います。私も含めてなのですが。だから、ただ「スポーツハラスメントはダメだ!」と一方的に主張するのではなく、一緒に考えていこうよ、と、なんらかの形で表現したいです。不器用でもいいから、下手くそでもいいから、関わる人全員が、少しでいいから考えていられたら、きっと社会は良い方向に動いていくと思うんです。

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横浜出身、オランダ在住のフリーライター&Webディレクター。ジャンルを問わないSEOライティングが得意です。ディレクションはLP・採用サイト・企業サイト・オウンドメディア、何でもやります。お仕事のご依頼は[marikoアット1design.jp]もしくはTwitterへ。[ID mariko_cabin442] 最近、剣道五段に受かりました。旅行と読書と寝ることと、漫画が好きです。細かいことを気にしない性格です。