海外への中古剣道具・道着・袴の寄付プロジェクト(日本 緑ノ風×オランダ剣道会デン・ハーグ)

埼玉県の剣道道場「緑ノ風」さんから、中古の剣道具・道着・袴をご寄付いただき、2025年3月15日(土)にオランダへ発送しました。

今後、こういった寄付プロジェクトで海外に剣道具を寄付される方の参考になるよう、かかった時間、発送の流れや迷った点、苦労した点などを記録として残したいと思います。

海外に中古の剣道具などを寄付する意義

2月11日、オランダの友人・シュルツから「子ども向けの中古の防具や道着・袴を安く購入、もしくは寄付してもらえないだろうか」と相談を受けました。シュルツは、オランダで少年剣道の指導に力を入れている剣道会デン・ハーグの代表を務めています。

ヨーロッパで剣道を始めること、そして続けることは、日本に比べてはるかにハードルが高く、それは他の国でも同様かと思います。

モチベーション維持・継続の難しさ

子どもの意思を尊重する文化圏の場合、子どもが「やりたくない」と言えば、親はすぐに辞めさせてしまいます。東洋の、馴染みのない運動文化であればなおさらです。

剣道を習っている友達が少ない上に、痛い・苦しい・臭い・理由を理解できない厳しさ…などが揃うと、モチベーションを維持するのはとても難しいです。

それに加えて、保護者には道着・袴・竹刀・剣道具を購入する経済的負担も乗り越えてもらう必要があります。このような状況で、道場が貸し出し用の道着や剣道具を備えていると、剣道を始めるハードルが一気に下がると思います。

剣道 緑ノ風 × 剣道会デン・ハーグの共同プロジェクト開始!

2月16日、剣道道場「緑ノ風」の山根先生に、「中古の防具などを集めることはできますか?」と相談したところ、「いいよ」と即答で快諾してくださいました。

山根先生は「幼少剣道研究所」などを通じて剣道の普及に熱心に取り組んでいる方で、2024年の夏に初めて知り合いました。当時、「剣道未経験の保護者と指導者の間には価値観の大きな隔たりがあるのでは? アンケート調査をして明らかにしてみては?」とアドバイスをいただき、私はそれをもとに調査を行い、記事を執筆しました。そのような経緯もあり、継続的にやりとりをさせていただいていました。

相談をする際、まず考えなければならなかったのは、「何が、どれくらい必要か?」という点でした。結構、寄付先もはっきりリクエストを出しにくいのかなと思います。これからどれくらい初心者が来るかもわからないし…。さらに、具体的なリクエストを寄付元に出すのも難しいです。寄付元の先生に調整していただく手間が発生するので…。そこで、ひとまず集めていただき、集まったものをそのまま送る方針にしました。

ちょうど、剣道会デン・ハーグの指導者の一人・ルーロフが、日本に2ヶ月間の旅行で滞在していました。そこで、彼を緑ノ風に連れて行き、寄付していただいた剣道具や道着・袴を直接持ち帰るか、郵送するかを検討することになりました。

最終的に、集まった剣道具や道着・袴の総量はなんと100kg近くになったので、郵送を選択しました。本当にラッキーなタイミングでした。ルーロフが日本に来ていなければ、私一人で荷物を持ち帰り、パッキングすることは到底難しく、寄付の受け取りや発送準備に多大な時間がかかったと思います。

3月7日(金):第一回目の緑ノ風訪問

緑ノ風には、合計で2回訪問しました。シュルツと山根先生でチャットグループを作るなどオンラインでのやりとりもしていましたが、やはり直接会って話をすることで、お互いに顔を合わせたからこそ生まれる言葉や発想があるはずだと考えました。何より、ご厚意で寄付していただくのだから、きちんと挨拶をするのが筋だと思い、ルーロフを連れて行くことにしました。

1回目の訪問では、まずはご挨拶を…と思っていたのですが、すでに紙袋3つ分の道着や袴を用意してくださっていました。さらに、折り紙をプレゼントしてくださる保護者の方や、稽古中もわざわざ「英語で質問コーナー」を作っていただき、皆さんの優しさが気持ちが伝わる場面がいくつもありました。

「来週くるなら、それまでに防具も集めておくよ」と言っていただき、1週間後にまた訪問することに。

3月14日(金):第二回目の緑ノ風訪問

「今日は、たくさん持ち帰れるように、防具袋を持ってきた!!」とルーロフ。私も大きめの防具袋を持参して、万全の状態で緑ノ風を訪問しました。

しかし、「これだけ袋があれば大丈夫!」と考えた我々の予測を大きく上回り、本当にたくさんの寄付をいただきました。

浦和のコインロッカーに荷物を預け、翌日取りに行く予定だったのですが、親切な方が私たちを板橋のホテルまで車で送ってくださいました。夜遅い時間にもかかわらず、本当にありがたかったです…。

さらに、その方はルーロフがカルピス好きだと聞いて、わざわざカルピスの原液をプレゼントしてくださいました。オランダにはそもそもカルピス自体がなく、「原液」という概念すらなかったと思います(笑)その方の娘さんは英語で手紙まで書いてくださっていて、優しさに胸がいっぱいになりました。こうした優しい気遣いが、緑ノ風さんには本当にたくさんあって…。優しさの刺激はルーロフにも、私にも伝わっているし、きっと寄付してもらった剣道具たちに乗って、さわやかな風のように海を渡っていくと思います。

アパホテル板橋に運び込まれた防具

梱包から発送完了まで、二人がかりで約5時間

ルーロフは日本に初めて来たので、日本の郵便事情などもわからず、一人で発送するのは不可能…。ということで、私もルーロフが宿泊していた板橋のアパホテルに泊まり、翌日、早速郵送作業を開始しました。

郵便局から船便で発送

国際で郵送する方法はいろいろあると思うのですが、おそらく一番安いであろう郵便局からの船便を選択。郵便局ホームページの『海外の料金表』の中にある第3地帯(オセアニア・北米(米国を除く)・中近東・ヨーロッパ)から事前に調べてはいたのですが、実際に窓口に行ったら「オランダは23kgまでしか送れませんよ」と言われました。「23kgって半端な数ですね…?」と窓口の人も不思議がっていました

ヨーロッパゾーンへの発送にはHSコード入力が必須

あと、EU加盟国に送る場合はHSコードの入力が必要とのことです。「推奨だから必須じゃないですよね?!」とオランダ人みたいなことを言ったら「いや、書いたほうがいいです。ヨーロッパ厳しいんで税関通らないで戻ってくる可能性あります」と言われました。こんなに苦労して送って、返送されたらと思うと震えます。

「剣道具、道着袴のHSコードとか超ニッチ…調べても出てこなそう…」と思いつつChatGPTに聞いてみたところ、やはりはっきりしない答えだったので、インスタのストーリーズで助けを求めました。すると、国際発送に慣れたある防具屋さんがコードの一覧を送ってくださいました!!!!防具、剣道着、周辺商品によって、細かくコードが分かれているので、本当に助かりました。

発送の段ボールは無地、トリプルウォール推奨

あと、段ボールがちょうどいいサイズがなくて…朝からスーパーなどいろんなところを歩き回って探したのですが、大きいサイズがなくて大変でした。郵便局の人曰く、「お酒の文字が印字された段ボールとかだと税関でチェックされる可能性があるから、可能であれば何も書かれていない無地の段ボールがいいです。ホームセンターとかで入手してください」とのこと。

段ボールの厚さ(層の数)にはシングルウォール、ダブルウォール、トリプルウォールがあって、「船便の場合は、重くなってしまうけど、可能であればトリプルにしたほうが良い」とのことでした。

タクシーでホテルから郵便局に移動

最終的に、ダンボール5箱分になりました。ホテルから郵便局まで1kmくらいだったのですが、とても運べないのでタクシーを手配。

タクシーに荷物を乗せたものの、荷物がありすぎて一人くらいしか一緒に乗れなかったので私は走って郵便局に向かうことに。「まりこが車に乗りなよ!」とルーロフは言ってくれたのですが、荷物を下ろせる自信がなかったので…。

なぜかバックヤードに降りたらしく(郵便局の裏側って初めて入りました)、ここで荷物の重さを測ってもらいました。4つの箱は20kg以内におさまったのですが、一つだけ30kgオーバーしたので、バックヤードでパッキングし直しました。

パッキングし直したのですが、ちょうどいいサイズの段ボールがなくて、この三つの荷物だけは月曜日に別送することに。この時点で布テープは4つ使い切りました

国際郵便マイページでラベルを印刷

最終的に、この日に発送する荷物は6つに。これらの荷物に、ラベルを貼ります。ラベルは手書きできないので『国際郵便マイページサービス』に登録して行う必要があります。このページでHSコードも入力します。参考までに私の入力画面のスクショ入れておきます。「万一発送できなかった場合の指示」の入力怖くないですか?ドキドキしながら出来るだけ細かく入力しました。

印刷されたラベルたち

発送費用は300ユーロ

日本円での正確な金額は覚えていませんが、船便で5つの荷物を送り、送料は約300ユーロでした。日本円に換算すると、およそ48,000円ほどでしょうか。万が一返送された場合は、さらに返送費用がかかり、再送の手続きが必要になります。

防具を集めてくださった方々、さらに車で送ってくださった方、そしてルーロフには旅行中の貴重な時間を使ってもらい…それぞれの少年剣道の指導者の先生方が協力し合ったおかげで、迅速に発送することができました。本当に多くの方のご厚意に支えられています。

船便のため到着まで数ヶ月かかりますが、どのような結果になったかは後日追記したいと思います。

1 個のコメント

  • ご苦労さまです。次の機会が有れば協力したいと考えています。
    又、3月2日の横浜での稽古会に見学を申し入れたのですが少し遅れて現地に着いた為か関係者以外は駄目と取り合って貰えなかったのが残念でした。

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    ABOUTこの記事をかいた人

    横浜出身、オランダ在住のフリーライター&Webディレクター。ジャンルを問わないSEOライティングが得意です。ディレクションはLP・採用サイト・企業サイト・オウンドメディア、何でもやります。お仕事のご依頼は[marikoアット1design.jp]もしくはTwitterへ。[ID mariko_cabin442] 最近、剣道五段に受かりました。旅行と読書と寝ることと、漫画が好きです。細かいことを気にしない性格です。