コロナが落ち着いたからか、今年は外国人観光客がすごく増えた気がします。夏から秋にかけて、フランス人、イギリス人、オランダ人などなど、いろんな国の剣士が日本に来てくれたので、一緒に出稽古に行きました。
そんななか11月半ばにベルギー人の友人からこんなメッセージが来ました。
「クロアチアの友達が日本にいくみたいです。まり子さん、何かアドバイス・コメントできませんか?」
クロアチア人とはヨーロッパ大会などで顔を合わせることはあったのですが、顔見知り程度の仲でした。連絡をとってみたところ、彼の道場の中学生4人と日本に1週間の武者修行にくるとのこと。
せっかくなので、横浜付近の少年剣道道場を紹介し、横浜武道館を借りて稽古会をすることにしました。
磯子警察少年剣道推進会での稽古
まず、火曜日にどこか稽古できる場所はないかと聞かれたので、横浜で火曜日に稽古している磯子警察少年剣道推進会を紹介しました。
磯子警察少年剣道推進会の子供たちは、とにかく元気で挨拶もしっかりしていて、行動も素早い。そして基本がとっても綺麗。クロアチアはこれから子供たちをしっかり育てていきたいとのことだったので、火曜日の稽古で紹介するなら絶対ここ!!と激推ししました。
先生も子供も保護者の方々も、クロアチア人をあたたかく迎えてくださって本当に心強かったです。
土曜日の部内戦にも参加させていただき、最後にお菓子でできた胴とアルバムをいただきました。
横浜武道館での稽古会
日曜日は、横浜武道館のフロア半面をお借りして稽古会を行いました。磯子警察少年剣道推進会、港南台剣道クラブ、東京から少年剣士と保護者の方々、先生方、日本に住むオランダ人、ベルギー人、中国人剣士も参加してくれました。
基本稽古を40分ほど行い、残り1時間は4チームに分かれて試合をしました。
私の仕切りが下手くそで至らないところばかりで大変申し訳なかったのですが…皆さんのおかげでクロアチア人たちは最高の思い出を作れたと思います。
海外剣士を紹介している理由
今回に限らず、オランダから少年剣士が日本に来たときは、戸塚道場さんに受け入れをしていただきました。大学生以上の剣士が来た際は、大学、実業団、警察のみなさんにお世話になりました。
私には、海外剣士との交流を通して、伝えたいことがたくさんあります。ありすぎて、毎回上手に言えないのですが…。
国籍も、人種も、言語も、住む場所も、宗教も文化も食べるものすらも違う人たちが、世界のどこかで剣道をしているなんて、なんだか不思議です。しかもひとたび防具をつけて、竹刀を交わせば、私たちは言葉はわからなくても友達になれます。
「なぜ剣道を始めたの?」「なぜ続けているの?」
こんな疑問を海外剣士たちに投げかけると「剣道を通してより良い人間になるため」「剣道の克己心の考えが好きだから」「強い心を持ちたかった」などの答えが返ってくることがあります。もちろん、競技として剣道を楽しんでいる人もたくさんいるのですが、生活の中にも剣道の考えを取り入れて、より良い人間になりたい、と考えている人が多くいます。
日本は最近、少子化の影響で剣道人口も減ってて、さらに普段の稽古の中で文化としての剣道を意識することは少ないです。でも、遠く離れた異国の人たちが、剣道の考えを気に入ってくれて、自分たちの人生をよくするために日々稽古に励んでいます。そんなことを伝えて、意識できたら、例え競技人口が減っていたとしても、意義のあることなんじゃないかって思っています。
他にも、「他言語を通して見る剣道」の面白さもあります。私は英語しか使えないのですが、英語で改めて剣道を説明しようとすると、たくさんの発見があります(この文章を読んでいる方にも、ぜひ英語で説明してみてほしいです!)。
言葉というものは、その国の文化そのものだと思っています。例えば「捨て身」は、ドンピシャで該当する英単語がありません。捨て身の概念を説明した上で、Sutemiとして使ってもらうしかないと思っています。私は海外剣道に触れたおかげで、語学学習が大好きになりました。きっと英語だけじゃなくて、あらゆる学問にこういった面白さがあって、だから、学校の勉強をぜひ頑張ってほしい!とも子供たちに伝えたい。学びというものは、発見と、成長の喜びに溢れていると思います。
恩は巡っていく
オランダに移住したときに、オランダをはじめとしたヨーロッパ剣道の方々に本当にお世話になり、助けてもらいました。
ヨーロッパに剣道を広めて、彼らといい関係を作ってくれた人がいなかったら、こんなことにはならなかったと思います。
今回のクロアチア人たちへの日本人の接し方をみて、きっとこうやって誰かがヨーロッパの人たちに親切にしたことが、巡り巡って私を助けてくれたんだろうなぁなんて思っていました。
誰かが剣道を大切に思ってて、それを海外に広めようとして、その気持ちを大切に受け取ってくれた人が、また大切にしてくれる人に渡して…そうやって剣道は広まってきたのかもしれません。少なくとも私の周りの人たちはそうでした。だから、私も自分が見聞きしてきたことを、できるだけ日本の人たちに伝えたいと思っています。もしかしたら興味ないよって思う人もいるかもしれませんが、誰かたった一人でも、私の気持ちを大事に受け取って、誰かにまた渡してくれる人に届いたらいいなぁと思います。
そんな思いで、今回はクロアチア人を紹介したり、稽古会を企画しました。至らぬところばかりでしたが、優しく受け入れてくださった皆さんに、改めて御礼申し上げます。