「気づける人」になるために


昨年日本に戻ってきてから約半年。ようやく生活が落ち着いて来ました。

私は中高は鎌倉、大学以降はずっと東京で剣道をしていたので、実は地元近辺で剣道をしたことがほとんどありません。

どこで剣道をしたらいいのかも、日本でのコロナ禍のルールもいまいち分からなかったので、この半年は稽古場所探しや運動不足解消に充てました。

そんななか、先日ご縁あって戸塚道場の稽古に参加させていただきました。稽古内容や子どもたちの強さにも驚きましたが、指導者の槌田先生のお話がすごく印象的だったので、許可を得てこちらに書き残したいと思います。

包含(インクルーダー)であれ

稽古が始まる前に、槌田先生からこんなお話がありました。

今日は新たに剣道を始めようとしている子も参加しています。新しい子はどう動いたらいいか分からないから、助けてあげること。それも先生に言われてやるのではなく、自分で考えて助けてあげること。

その日は子どもが40人ほど参加していて、初めて参加する子も何人かいたようです。準備運動の時間帯から、上級生の女の子が小さい子を助けてあげていたのですが、改めて先生も新メンバーをサポートする大切さを強調していました。大袈裟かもしれませんが、これって組織全体にとってすごく大事なことだと感じます。

ちなみに、このように新しい組織に来た人たちに疎外感を与えない人、人種・国籍・性別・年齢に関わらず、平等に人々に接して迎える人のことをインクルーダーと言います。アメリカのギャラップ社が開発した、人の「強みの元=才能」を見つけ出すツール『ストレングスファインダー』にある、人が持つ34の強みの一つです。

気づける人になるために

新しく入った子をサポートしよう、という呼びかけから、話は「気づき」につながりました。

例えば、体育館の入り口に高齢の方が立っていたら、皆さんはどうしますか?立っているのが辛いのではと気を遣って、椅子を持っていくのではないでしょうか。新しい人を迎えるのも、自分の周りを見渡して「これが必要では」と考えを巡らせることも、どちらも「気づき」の力です。

みんなが大人になって社会に出たときに、この力はとても重要になります。自ら気づいて行動する人と、言われて行動する人には大きな差が出るでしょう。

みんなが自分で気づいて行動できる子になることを、切に願っています。

仕事をしていると、ぼんやりしている人もいれば、とんでもなく気遣いができる人など、いろんな人がいます。

気遣いができる人は、「ここまでやったら相手は負担に思うかも」など相手に合わせて気遣いのチューニングすらしているように感じます。いわゆる「できる人」ですね。

「ぼんやりしている人」と「できる人」、どちらに人と仕事が集まってくるかを考えたら、間違いなく後者でしょう。

「この人ならやってくれる」と、ぶら下がってくる人もいるかもしれないけれど、トータルで見たら「気づける人」は豊かな経験ができるのではと思ってます。質の高い仕事に繋がったり、喜びや幸福など、強烈なプラスの感情を経験する機会が増えるのではないでしょうか。

しかも、槌田先生は命令口調で言うのではなく「なってくれることを切に願う」と結んでいました。この言葉遣いも、個人的には衝撃でした。なぜ大事かを分かりやすく説明し、あるべき道を示すけれど、決して命令や強要はしないんだなと…。

子どもたちの行動

稽古前後で出会った道場の子どもたちの行動も印象的でした。

戸塚駅から稽古場所である小学校まで少し迷っていたところ、コンビニの前で2人の男の子が挨拶をしてくれました。

まず挨拶をしてくれたことが衝撃でした。最近の子供って、挨拶しなくないですか…?防犯意識や照れがあるんだろうなと、挨拶しないことが普通だと思ってたので、びっくりした反面、嬉しかったです。防具持ってるだけの得体の知れない女によく挨拶してくれたなと、感心しました。しかも「道が分からないからついて行っていい?」と聞いたら快諾してくれました。

稽古の最後に中学生の女の子にも助けてもらいました。大人も子供も一緒に整列をしたのですが、どこに並んだらいいか迷ってモタモタしていたら、「佐藤さん、こっちです」と明確に場所を教えてもらいました。これもすごく助かったし安心感がありました…!こんなことできる中学生なかなかいなくないですか?

「新しい人」に対する態度

子ども・大人に限らず、新たに組織に加わる人は、少なからず不安を抱えているし、その組織独自の雰囲気やルールを掴むのに苦労するはずです。

しかし、新人たちが組織に溶け込んでいける細やかなか気遣いは、実は大人でもできている人は少ないのではないしょうか。逆に、そこが上手い企業は生産性も高いように感じます。

ライターとして取材したある企業は、新卒・中途・アルバイト…新たに入ってくる人たちが気持ちよく働けるように様々な工夫をしていました。なかなかこんな会社ないよな…と成長の様子をずっと見ていたのですが、業績も好調で創業から数年で上場していました。

「挨拶をしてくれる人」「気を配って親切にしてくれる人」「勤勉で優秀な人」がいる空間は、どこか温かいし安心感があります。こういうことがきちんとできる人には、同じ考え方の人や善良で優秀な人が集まるだろうし、それが心地よい居場所になって、生産性が高まる…みたいな好循環が生まれるのかもしれません。

言葉にすること

最後に、指導者の方が考えや思想を言葉にすることについて。分かりやすく言葉で説明することには、大きな意味があるように感じます。オランダで暮らしていて思ったのですが、言葉が持つ役割には「伝達」だけではなく「思考」のための側面もあります。個人の思考に対する言葉の影響力はすごく大きいと思います。指導者の先生方が口にした言葉は、それを聞いて育つ子どもたちの思考を形作っていくはずです。

なので、こうやって大事なことをわかりやすく、丁寧に、そして何度も繰り返して伝えることは、すごく意味があるなぁと感じます。

戸塚道場の槌田先生は、剣道雑誌・メディアの取材を受けていらっしゃったり、ご自身でもブログ『翔き錬成会』を書かれています。私はこのブログがすごく好きなので、興味のある方はぜひご覧ください^^


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ABOUTこの記事をかいた人

横浜出身、オランダ在住のフリーライター&Webディレクター。ジャンルを問わないSEOライティングが得意です。ディレクションはLP・採用サイト・企業サイト・オウンドメディア、何でもやります。お仕事のご依頼は[marikoアット1design.jp]もしくはTwitterへ。[ID mariko_cabin442] 最近、剣道五段に受かりました。旅行と読書と寝ることと、漫画が好きです。細かいことを気にしない性格です。