勝負へのこだわりがもたらすものとは


日本に戻ってきてから、少年剣道の取材によく顔を出しています。私は子どもが好きで、東京にいた頃から少年剣道にずっとなんらかの形で関わりたいなぁと思っていたのですが、オランダに行ったことがきっかけで剣道雑誌とつながりができて、「取材」という想像もしなかった形で関わることになりました。

ああ、素晴らしいなぁと感じる道場は、指導者の先生がピュアで、子どもの心を掴んでいます。

今日お話しした少年剣道の指導者の方に「どうやって子どもたちの心を掴んでいるんですか?」と聞いたら、「子どもたちに正面から向き合うこと」という答えが返ってきました。

子どもと向き合うってどういうことでしょう。

その答えは「子どもたちを勝たせること」でした。

本当にシンプルですよね。子どもたちは、勝ちたい負けたくない
だって、子どもの頃のジャンケン遊びを思い出してください。シンプルな遊びだったけど、誰しも勝とうとしたはずです。

もちろん、勝つこと以外、たとえば友達づくりのために剣道をしている子どももいるはずだけど、やるからには勝ちたい。それが多くの子どもの本音ではないでしょうか。

その先生は厳しくてこわいので、稽古中に泣いてしまう子どももいます。でも、「ちゃんと立て」「ふらふらするな」「挨拶しろ」「お礼を言え」「素早く動け」と、先生が入れる喝を子どもたちはちゃんと聞いて、ついていっています。

勝利がもたらすものとは

戸塚道場が主催する『翔き錬成会』に参加した時も驚いたんですけど、なんだか、子どもたちの「人間としての輪郭」みたいなものがはっきりしているんですよね。ぼんやりしていないんです。この点に関してもその先生に聞いてみたのですが、こんな答えが返ってきました。

勝負にこだわるようになると、「自分」が前に出てくる。そうするとあらゆることに良い影響が出て、「必要とされる人間」につながる。うちは日本一は目指していないけれど、社会に出たときに周りから必要とされる人間になってほしいと思っている。

確かに、勝ち負けにこだわりが出て「勝ちたい」って気持ちが湧き上がってきたとしたら、それって「自分」の欲望ですよね。「欲」って、必ずしも悪いものではなくて、人間を成長させるガソリンになることもあります。

だから私は、勝利がもたらすものは栄光とか名誉よりも、生きていくために自分を支えてくれる「自信」や「勇気」、そして周りを励ます「灯」みたいなものだと思います。

こうやって勝負事にこだわる道場は、生活面もしっかりしていて、「目配り気配り」「時間厳守」「素早い行動」「整理整頓」なども大切にしています。こういうことを大事にしている場所に身を置くと、目が覚めたような感覚になるというか、人間がさらにくっきりしてくると思います。

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最後に、最近話す先生たちは「子どものために」と口だけじゃなくて、本当に心から子どものことを考えていて、真剣だなぁと感じます。子どもたちのことを話すときに目がキラキラして、どうやって強くさせようか創意工夫を怠らず、「この子達が社会に出たときに、どんな人間であれば困らないか」を本気で考えています。そういう大人の言葉って、子どもの心にちゃんと届いていると思います。


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横浜出身、オランダ在住のフリーライター&Webディレクター。ジャンルを問わないSEOライティングが得意です。ディレクションはLP・採用サイト・企業サイト・オウンドメディア、何でもやります。お仕事のご依頼は[marikoアット1design.jp]もしくはTwitterへ。[ID mariko_cabin442] 最近、剣道五段に受かりました。旅行と読書と寝ることと、漫画が好きです。細かいことを気にしない性格です。