あのひとの横顔


ある強豪道場の先生のブログを見て「ぜひお話ししたい」と、神奈川と埼玉の中学校の先生から連絡が来たそうです。二人とも剣道未経験者。部活の地域移行や、教員の負担軽減がフォーカスされるなかで、ずいぶん熱心な先生だなぁと驚きました。

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私が中学生の頃、鎌倉市の大会で優勝を争うライバル校がありました。その学校には、若い女性の先生が顧問でついていて、生徒たちを一生懸命応援している姿が印象的でした。その先生も、剣道未経験者でした。

髪が長くて、よくふんわりしたワンピースを着ていました。生徒たちが試合をするときは、睨むような真剣な顔で一生懸命試合を観ていて、なぜかその横顔だけ今でもはっきり覚えています。

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その学校は、ほぼ全員が初心者で中学生から始めたそうです。部員数が多く、いつも先生と生徒たちは和気あいあいとした雰囲気に見えました。

ある夏の市大会で、うちの学校が優勝し、その学校が準優勝でした。確か、上位何校かが地区大会に出て、そこからさらに何校かが県大会への切符を手にします。私たちは県大会の一回戦で負けましたが、その学校は関東大会まで進みました。顧問の先生は未経験、部員は初心者から始めた子たち。今考えるとすごいことだと思います。

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大人になった今考えると、先生は大変だったろうなぁと思います。道場にいる剣道初心者の人が中学生に教えているようなものです。

当時はインターネットもなかったし、剣道未経験の先生が稽古法に関する情報を手に入れるのはすごく難しかったのではないでしょうか。子ども心に、「あの人たちは、気持ちで勝ち上がったんだ」と思ったことをよく覚えています。

食い入るように試合を見る先生の横顔を見て、「この人たちはすごく愛されているんだろうな」と感じました。子どもからすると、すごく幸せなことだと思います。

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冒頭の話に戻りますが、今度、強豪道場に連絡をとってきた先生方が集う場に、私も参加させてもらうことになりました。一体どんな先生たちなのでしょう。

中学生の頃に出会ったライバル校の先生には、もう会う術がないので、あのとき何を考えていたのか、何が中学生たちを押し上げたのか、もう聞くことは叶いません。でも、きっとそれに近しい話が聞けるのではないかなぁなんて、淡い期待を抱いています。


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ABOUTこの記事をかいた人

横浜出身、オランダ在住のフリーライター&Webディレクター。ジャンルを問わないSEOライティングが得意です。ディレクションはLP・採用サイト・企業サイト・オウンドメディア、何でもやります。お仕事のご依頼は[marikoアット1design.jp]もしくはTwitterへ。[ID mariko_cabin442] 最近、剣道五段に受かりました。旅行と読書と寝ることと、漫画が好きです。細かいことを気にしない性格です。