カマチとハマチと武士の風習


私が所属している剣友会は、警察署の道場で稽古をしています。
上座には神棚があって、床は木の板。稽古場の造りは「ザ・日本の剣道道場」です。

下足場と道場の境界には1〜2センチほどの高さの細長い板がはめ込まれていて、どうやらそれは「框(かまち)」という名前のようです。

ある日、框の上に乗って挨拶をした子がいて、先生が「框は内と外の境界線。境界線の上には立たないこと」と説明していました。内でも外でもない境界線に留まりすぎると、別の世界に行ってしまう…みたいな物語がありそうですね。

日本家屋と框

稽古が終わってから框について調べたら、玄関の靴を脱ぐ段差の部分も框であることがわかりました。畳でも使われているようです。

そういえば、ヨーロッパは玄関に段差がある家屋はなかったなと思い返しました。
段差がないから、家の中にスルッと入ってしまえること、誰かの家に土足で入ることに小さな違和感がありました。止まったエスカレーターの上を歩くようなむず痒さです。

「剣道は日本文化だから」と稽古の終わりに先生がおっしゃってたのですが、所作、建物の作りなど、本当に色々なところに文化が反映されているなぁと感じます。

カマチとハマチ

框の話をしていたら、小学生が「カマチって魚にもあるよ!」と言いました。
確かに寿司のネタにありそうだなぁと「へーそうなんだ」とぼんやり聞き流してたのですが、いや、それハマチじゃない?と、ハッとしました。

框について調べるときに、ついでにハマチについても調べました。
ハマチって、ブリの子供なんですね。しかも関西圏と関東圏で呼び名が違うんです。

関西圏
モジャコ(稚魚)→ツバス(20cm)→ハマチ(40cm)→メジロ(60cm)→ブリ(80cm以上)

関東圏
モジャコ(稚魚)→ワカシ(20cm)→イナダ(40cm)→ワラサ(60cm)→ブリ(80cm以上)

成長に従って名前が変わる魚を出世魚というらしいです。
大きさや成長によって名前が変わるなんて、雪の状態で名を使い分けるアイヌ人みたいですね。

ちなみに名前が変わることには、武士の風習が由来しているそうです。

当時の武士は子どもの頃は「幼名」、大人になってからは「仮名」を名乗り、地位が与えられれば、それにふさわしい名前に改名することもありました。
例えば、徳川家康は……
竹千代→松平元信→元康→松平家康→徳川家康
と、幼名から仮名だけでなく、出世の度に改名しています。
このような風習から、大きくなるにつれて名前が変わる魚は「出世魚」と呼び、縁起物としても親しまれています。

出世魚ってどんな魚??』いきふぉめーしょん

名前が框に似てるだけで、まったく関係ないと思っていたハマチも武士に関係がありました。

剣道に関わっていていいなぁと思うことの一つは、こういうちょっとした話から発見や新しい学びがあることです。大人の私でも知らないことがたくさんあります。

住宅の形も、言葉も日々変化します。身近なところから、文化について先生が子どもに教えてくれることは、とても意義深いことだなあと感じます。


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横浜出身、オランダ在住のフリーライター&Webディレクター。ジャンルを問わないSEOライティングが得意です。ディレクションはLP・採用サイト・企業サイト・オウンドメディア、何でもやります。お仕事のご依頼は[marikoアット1design.jp]もしくはTwitterへ。[ID mariko_cabin442] 最近、剣道五段に受かりました。旅行と読書と寝ることと、漫画が好きです。細かいことを気にしない性格です。