オランダ移住と孤独


憧れと希望を持ってスタートしたオランダ移住生活も、今年で5年目に突入しました。

「いつか海外で生活してみたい」
「日本以外の国の人たちと仕事をしたい」

こんな希望を胸にオランダに渡り、本当にたくさんの素晴らしい経験をしました。新たな人間関係、仕事、剣道……オランダ移住なくして、私の人生は語れません。

一方で、ここ3年くらい自分の心の中にあったのが「孤独」でした。そしてこの話を同年代のオランダのフリーランスや企業勤めの友人にすると、「私もそう思ってた」「孤独だよね」と共感されることがあります。

もしかしたら、海外で暮らす人の一部の方は、私と同じ悩みを抱えているのかもしれません。これから海外移住をする人の参考に、そして現在苦しんでいる人の助けになればと、自分の経験や孤独の克服について記します。

共感されない孤独、理解されない孤独

日本の外に出ると、自分の気持ちをわかってくれる人、共感してくれる人はずっと少なくなります。これは文化の違いはもちろん、共通体験の少なさや言葉が影響しているように思います。

海外移住組、特にフリーランスは、小学校、中学校、高校、大学、会社といった自分がずっと所属してきたコミュニティのようなものがなく、ゼロから人間関係と仕事のつながりを作らなくてはいけません。国も文化も異なるため、自ずとこれまでの人生で経験してきた共通体験は少なく、他のみんなはわかるのに自分だけ理解できないこともあります。

英語が堪能ではない場合、自分の気持ちを表現しきれないストレスも少なからず生まれます。私は日本語だとかなりお喋りな方なのですが、英語での発言量は日本語の20%にも満たないと思います。

さらに、文化の違い。オランダに来る前は日本人の残業の多さや非効率さに不満たらたらだった私なのですが、「日本人だったらもっと○○なのに…」と思ってしまうこともありました。まさか自分がこんなことを考えるなんて、驚きです。

100%これらのことがマイナスに働くわけではなく、多くの場合はプラスに働きます。私は価値観の違いや学びを記事にして発信していますし、言葉が通じない環境に身を置くことで語学力向上につながりました。みんなと共通経験がないことは、新鮮な新しい発見を生みます。

ただ、ちょっとした人間関係のトラブルや日常での小さなストレスが、チリチリと積み重なり、「誰にも私の気持ちはわからない」「本当に味方してくれる人なんていない」という、硬い岩のような気持ちを抱えるようになりました。

移住をするなら当たり前に起こることだと頭ではわかっていても、抑えきれない寂しさや、処理しきれないざらついた気持ちがいつも側にあったように思います。

コロナが追い討ちをかける

これらの状況に、コロナが追い討ちをかけました。オランダは10月から2度目のロックダウンになり、それでも感染状況が落ち着かず夜間外出禁止になりました。ストレス解消の剣道もできず、孤独感は増すばかり。電話やzoomで日本の友人・知人と話して励ましてもらえても、すぐ隣にいてもらえる距離にいないと、どうしてもすっきりしないのです。無意識のうちに歯を食いしばっていたようで、「え、親知らず生えてきた?!」と勘違いするほど顎が腫れてしまいました。

母の体調がおもわしくないのもあり、2020年12月から3週間ほど日本に一時帰国をすることにしました。

我が故郷・丸山台

半年の帰国と孤独からの脱却

フライトのキャンセルやコロナの状況も影響して、結局日本には半年滞在しました。私が持つビザで許されるMaxの期間が半年です。

そしてこの半年の帰国が私の孤独を癒し、気持ちの整理をつける一つの区切りになりました。

孤独の対策方法として、「日記を書くこと」「本を読むこと」「音楽を聴くこと」「自然の中でリラックスすること」などがありますが、どれをやっても根本的な解決にはなりませんでした。

それよりも、家族と一緒に穏やかな時間を過ごし、見慣れた日本の風景の中で生活することの方が、私の心は安らぎました。

猫にも相当癒された

そして、決定的に私の心を癒すことになったのは、日本人と一緒に働いたことです。今回の帰国で新たな案件もいくつかスタートしたのですが、いずれも日本とオランダやヨーロッパを繋ぐような仕事でした。

普段も似たような仕事をしているのですが、オランダでは「何か変だな」と思っても、伝家の宝刀「ここはオランダだぞ」でぶった斬られると本当にもう、何も言えないのです。

私は外から来ている立場だし、相手にその気はなくても「嫌なら帰れば?」と言われているようなものなんですよね。日本人との仕事はそれがなく、逆に私が普段モヤモヤしていたことを「いや、それあり得ないから」とはっきり言ってもらえる機会があって、めちゃくちゃ癒されました。

そして、「それだけで癒される孤独って、大したことないのかもしれない」と考えるようになりました。結局、自分が一番大切に思っていることに対して共感したり、一緒に怒ってくれる存在が一人でもいてくれれば、私は孤独を感じないのかもしれません。

2021年6月末の成田空港。がらんとしてます

半年の日本滞在を経て100%気力をチャージしオランダに戻って来ました。こんなに「孤独だ、孤独だ」と繰り返し書いていますが、普段周りにいるオランダの友人・知人には本当によくしてもらっているし、友達もたくさんいます。

誰かに無視されたとか、いじめられたとかではなく、むしろ周りにいるのはいい人ばかりです。でも、それでも処理しきれない孤独があったんです。

今この記事を読んでいる方でも、同じ気持ちを抱えている人がいるでしょうか?私はたまに海外移住組の記事を読んで、自分と似たような経験をしている人がいると「そうそう、そうなんだよ!!!」と身を乗り出してしまうことがあります。この記事も少しでも、そういった人の助けになれば幸いです。

また、これから海外移住を考えている人に向けては、「こういうことが起こる可能性もありますよ」とお伝えしたいです。家族やパートナーと移住する人は大丈夫かもしれませんし、単身で来ている人も孤独を全く感じないかもしれません。一つのエピソードとして、参考にしていただければ嬉しいです。

追記

この記事を出してから、同じ海外フリーランスの人たちから「私も同じこと感じてました」って連絡を結構いただきました。色々リプライやDMをもらったのですが、その中でも共感したツイートのリンクを貼っておきます。


11 件のコメント

  • 時折、楽しく拝読させて頂いています。
    私も定年後には、海外で剣道を教えながら暮らせれば楽しいかなと安易に考えていましたが、現実は甘くないと言われそうですね。
    ただ、マリコさんにとっては若い内にしか出来ない経験で有り、やらない後悔よりやった後悔の方が後々、人生のプラスになると思いますよ。愚痴は、いくらでも聞きますので憂さ晴らしに投稿して下さい。楽しみにしています。

    • Yanoさん、コメントいただきありがとうございます!住む国や人の性格によっても感じることは違うと思いますので、私の経験が全ての人に当てはまることはないと思っております。でも、おっしゃる通り今しかできない経験ですし、移住したことに後悔はありません。色々と大変なこともありますが、それらも抱えて前に進んでいきたいと思っています。

  • はじめまして、オランダ(Amsterdam)に昨年より在住しているAkikoと申します。シンガポール時代の友人からサイトを紹介頂き、同世代で日本での出身地も近いようで、親近感を持ちながら拝読しておりました。最近オランダにお戻りとのこと、私もこちらへ移住目的で参りましたので、色々とお話が出来ればなと思っております。もし宜しければGmailアドレスへご連絡頂けたら嬉しいです。
    どうぞよろしくお願いいたします。

    • Akikoさん、コメントしていただきありがとうございます!シンガポールにいらっしゃったのですね。お知り合いの方が本ブログ紹介をしてくださったとのこと、とても嬉しく感謝しております🙏最近仕事が立て込んでいるのと、正直なところ、こういったご連絡をいただくことがすごく多くて、以前はご連絡いただいたら会うようにしていたのですが、いろいろ聞くだけ聞かれて音沙汰がなくなったり、こちらから連絡しても返信がなかったりと、がっかりすることが多くて新しく人に会うことに結構臆病になってしまっております。私よりもオランダに詳しい先輩方がTwitterやアムステルダム掲示板に多数いらっしゃいますので、そちらで交流したりサークルに入ってみてはいかがでしょう^^ 付き合いが長くなった時や、イベント開催時にはリアルで会うこともあります!

  • Marikoさん、返信どうもありがとうございます。突然のメッセージにてこちらこそ失礼しました。
    そうですよね、今後どこかでリアルに出会えたらと思います!
    お互いオランダ・アムステルダム生活楽しみましょう!そしてMeet up等自分で探してみます!これからも拝読させて頂きます〜:)

  • Marikoさん、早速のご返信どうもありがとうございます。
    そうですよね、お忙しいところに突然のご連絡を失礼しました。Meet Up等色々探してみたいと思います。
    私はまだまだ新参者ですが、どこかでリアルに会えたらと思います。
    これからも拝読させて頂きます。お互いアムステルダム生活、Enjoyしましょう〜! 

    • Akikoさん、ありがとうございます!はい、何かの機会にお会いできたらよろしくお願いします^^ 私けっこう出不精で、あんまりこちらのイベントごとには参加せず、自宅とオフィスの往復or剣道でしか外に出ません。剣道の道着を着て市内を自転車で走ってる日本人がいたら私なので(荷物を軽くするために道着きて体育館に向かってます)、見かけたら声かけてください!

  • 欧州の大学院、現地就職、アムステルダムへのフリーランス移住、その後また別の欧州国へ移住した者です。Marikoさんと同じように「海外で生活してみたい、仕事したい」という動機で日本を出ています。それぞれの状況や環境で良いことも悪いこともあるし、新たな楽しい出会いや経験もあるし、孤独も感じれば日本ならこうじゃないのに、って理不尽だと思うことも言葉が分からなくて不便や色んな不満を感じることも多々あります。でもそれってポジティブであろうとネガティヴなことであろうと、全部自分で選択して行動している結果であって、いうなれば全部自業自得です。この孤独・苦労・不便を誰か分かって、って言って、「OOOあるある」の共感を求めても同じ様な環境でそのような経験した狭い人達の中でしか共感って得られないと思います。他の人達からしたら自分で決めて言葉も文化も違う海外にわざわざ行ったんでしょ、とか、現地人からしたら頼んでもないのに勝手にやって来て嫌なら帰ば?って感じでしょう。。海外にいる目的・理由・モチベーション等が、ネガティブに感じる部分を上回るものなのかどうか、が海外生活が続くかどうかに大きく影響しそうです。

    • tarinさん、コメントありがとうございます!そうですね、おっしゃる通り、他の人からしたら「自分で選択したんでしょ?」だし、現地の人からしたら「別にお願いして来てもらったわけじゃないし、嫌なら帰れば?」です。移住組の多くの人はわかっていることだし、わざわざ口に出すことではないと思うのですが、今回はあえて書いてみました。自分が感じてた感情を残しておくこととと、そして苦しさを抱えている人に少しでも力になれたらいいなというささやかな願いです。あとは、海外移住の良い側面ばかりメディアで見かけるので、ネガティブな側面もあえて発信する必要があるのでは?と考えたことも理由の一つです。

      私はオランダに来てよかったなって思ってます。オランダの人たちには本当に感謝していて、たくさんの素晴らしい経験をさせてもらいました!

  • お一人で5年もオランダにいらっしゃるとは、本当に度胸が座っていらっしゃると思って、興味深く記事を拝読させていただいております。当方は7年間、アフリカの観光都市に住みました。現地の人々との交流だけでなく、現地在住の欧米人と接する機会も多かったです。特にオランダの方々とは、縁あって東京在住時代から何かと関わりがあり、過去に出会ったオランダの方々を思い出しては、オランダ人社会で生きることがどんなに大変か想像しながら、拝読しておりました。

    その中での孤独、とてもよくわかります。誰にも理解されない孤独。配偶者にさえも一生わかってもらえないだろう孤独。この人にはわかってほしいという期待を、消しても消せない。すると、おのずと孤独が増幅するんですよね。

    私は、そんな時、YouTubeでお笑いを見まくっていました笑 。「嫌なら帰れば」という言葉、実は東京に住んでいた時に、日本人の友人が、中国人の友人に対して放った言葉でもあったんですね。両者の気持ちは、どちらもわかります。良い、悪いではなく、「嫌なら帰れば」という前提で私はここにいる。そう考えると、ゲームのような感じもしました。そう、嫌なら帰ればいい、という自由が自分にはある。帰るという選択肢だけではなく、他の国に行く、という選択肢もあると。それはアドバンテージでもあるのかな。陰ながら、marikoさんの幸せを祈っております。

    • ミーナさん、コメントどうもありがとうございます!7年もアフリカにいらっしゃったんですね!!アフリカ大陸はまだ足を踏み入れたことがないです。オランダから近いので行ってみたいのですが…。

      配偶者にさえも一生わかってもらえないだろう孤独。この人にはわかってほしいという期待を、消しても消せない。すると、おのずと孤独が増幅するんですよね。

      この部分、すごく共感しました。誰かと一緒にいるからこそ増幅する孤独があるなって。最近は、自分の孤独は自分だけのもので、誰かに埋めてもらったりなんとかしてもらうものじゃないんだなって考えるようになってきました^^ そして他人の孤独にも、無遠慮に足を踏み入れないようにしたいと思ってます。
      「嫌なら帰れば」は、誰かに言われても、他の人には決して言うまいとオランダに来てから強く思うようになりました。あとは、誰かが本当に苦しそうだったら、手を差し伸べられる人間になりたいですね。最後の「幸せを祈ってます」って言葉、すごく嬉しかったです!私もミーナさんの幸福を祈ってます!

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    ABOUTこの記事をかいた人

    横浜出身、オランダ在住のフリーライター&Webディレクター。ジャンルを問わないSEOライティングが得意です。ディレクションはLP・採用サイト・企業サイト・オウンドメディア、何でもやります。お仕事のご依頼は[marikoアット1design.jp]もしくはTwitterへ。[ID mariko_cabin442] 最近、剣道五段に受かりました。旅行と読書と寝ることと、漫画が好きです。細かいことを気にしない性格です。